「ただいま」
「お帰り。どうだった?」
「予想以上に面白いものが見れたわ。ゆっくりお話もできたし、そつなく依頼をこなしたのはさすがってところかしら」
「僕も見たかったな」
「今からたっぷり話をしてあげるわ。……ここにいるのも飽きたかしら?」
「うん。決まりだけど、長い間ここにいたら飽きる」
「あなたの為に周りでお祭り騒ぎもさせてるのに」
「飲めるお酒の種類も限定されてるし、やっぱりちょっと切ないよ」
「我慢して。今日からは私もしばらくここにいるから」
「そういえば、例のものは手に入れた?」
「いいえ。取られちゃったわ」
「取り返さなかったの?」
「まさかピンポイントで取られるとは思ってなかったのよ。だから敬意を表して何も言わなかったわ。ちょっとだけ仕返ししてあげたけど」
「何をしたの?」
「それを言ったら、今からの話がつまらなくなっちゃうでしょ」
「それもそうか」
 彼女はくすりと笑うと、彼の体に頬を寄せる。
「あと、少ししかないのね」
「未練ある?」
「本当は、もうないと思ってたのだけど……。ほんの少し、ね」
 彼の温もりを噛み締めるように、彼女はそっと瞳を閉じた。


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