雪景色
「フェイト、ちょっとまってよ」
「ほら、早くしろよ」
軽快に階段を上っていくフェイトの後を、ソフィアは懸命に追っていく。
階段を一段ずつ上ってゆく。上るごとに回りの空気が冷えていく。その寒さが厳しくなった頃、ゴールが見えてきた。
あれは何?
白く輝くものが見えてくる。光をまとって天から降り注ぐそれはまさに羽。
外に飛び出す。松明の暖かい光から、自然の冷たさを含んだ光が包み込む。
「うわぁ……」
一面銀世界。いや、この景色を銀なんて成金の金属に例えるのは失礼かもしれない。
南にそびえ立つ山々は雪化粧をし、北に広がる平野にもパウダーをまぶしたように優しい白が塗られている。その平野の中に敷かれている濃い茶色の絹が一本、下に広がる町から北に伸びていた。下々にある町並みは、ケーキをデコレートしているようだ。色取り取りの服を着ている人々はろうそくか。今を生きている人々は、そんな事を知らないのだろう。
「綺麗だね」
ソフィアの笑顔にフェイトも笑顔で応える。
「雪見るの久しぶりだろ? と言っても、ここに来るまでに沢山見たか」
「でもこの景色は一級品だと思うな、私」
「ありがとう。僕も前ここに来た時、すごいな、って思ったから、ソフィアに見せたくてさ」
ここはアーリグリフの物見の塔。
シーハーツとアーリグリフが戦争をしていた頃には活用されていて、兵も沢山いたに違いない。だが協定が結ばれた今となっては見張る必要などなく、一応兵は配置されている……はずなのだろうが今は見当たらない。寒くて城の中に入ってしまったというところだろう。
ようやくこの世界に幸せが訪れたのだ。まだまだ復興に時間はかかるだろうけど、平和を謳う人々にとってそれは苦ではないはず。
ただ、フェイト達は違った。幸せに浸る間もなく、新たな敵と遭遇することとなる。
神とも言える存在―――創造主。
ソフィアは手のひらに乗ってもなかなか溶けることの無い雪を、そしてそれを生み出した灰色の空を、じっと見つめた。
「こんな綺麗な景色見てるとさ、今私たちに起こってる事が嘘みたいに思えてくるよね」
いつの間にかソフィアの笑顔は消えていた。
「どうして私たちだけにこんなこと起こるんだろうね。本当は皆でゆっくり暮らしたかっただけなのに」
私たちの代わりなんてごまんといる。下々を歩いている人だって、もしかしたら私たちの代わりだったかもしれない。この宇宙に住んでいる誰だってよかったのではないのか。
フェイトは腰に手を当てた。
「僕も思ったときがあるよ。ここに来てばっかりのとき、クリフに言ったんだ。そしたらさ、『お前は知らないのかもしれないけど、辺境の宇宙ではまだドンパチやってるんだ。その被害が今お前さんにきた、ただそれだけだろ?』こんなこと言ってさ」
ソフィアは微笑して、
「あのクリフさんでも、まともな事言うときあるんだね」
「まあね」
フェイトも微笑み、そしてまた真顔になり、
「そういうのは、全部運命だったって考えれば良いんじゃないかな」
「運命?」
「うん」小さく頷いて「ハイダ襲撃、そして僕はクリフに会って、この星に降りて、たくさんの事を学んで、そして今世界を救おうとしている。ここまでいろいろなことが起きたんだったら、珍しい事が起こりすぎてるんだったら、それは運命なんじゃないかな」
「少し投げやりすぎない?」
非難めいた口調でソフィア。フェイトは肩をすくめて、
「でもさ、運命だと仮定したら、なんだか気が楽にならないか?」
「まあね」ソフィアの視線はまた空に戻る。「運命か……もしこれが運命だったとしたらその運命の神様ってのはちょっとだけ意地悪なんだろうね」
本当に意地悪だ。私たちに力を授け、両親と引き離し、フェイトなんてお父さんを失って、生活は平和からかけ離れたものになった。何にもしていない、それだけだったのに。
「でもその神様も、いい事してくれたよ」
フェイトは微笑む。冷たい雪の中で、暖かい笑み。
「どんなこ―――」
ソフィアが言い終わる前に、フェイトは後ろからそっとソフィアを抱きしめた。
「ソフィアに逢えた」
一瞬きょとんと、上から覗き込むフェイトを見て、それから少々赤くなる。軽くもたれかかると、その腕に自分の手を置いた。
この寒い雪の中、ぬくもりを感じられるように。
「うん」
もしもし神様。
あなたは意地悪な神様です。
こんなに辛い運命を背負わせたんだから。
でも私、これぐらいだったら、
――――――絶対に、文句は言わない。
HR
砂糖吐きますね。
元ネタはあるPAを少しだけいじったものです。
まぁ、最後の言葉を言わせたかっただけなんですけどw
あはは、やっぱいいなぁ、フェイソフィ。うへへ(壊)
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