【31.例えば僕と人物調査・前】
 友人に好きな人が出来ると、その人の素性について、僕は第一に身の回りにいる女友達に聞いて回ることにしている。
 特に今回は聞きやすい。友人が好きになったタカハシトモカさんと、ミサキが同じクラスなのだ。
「タカハシトモカさんって知ってる?」
 僕は彼女の家に遊びに来ている。手土産に茶饅頭を持っていったので、お茶を出してもらい一緒に食べているところだ。
「私と同じクラスのこだよね」彼女はお茶をすすって「またカタヤマくん関係?」
「うん。一目ぼれなんだって。カタヤマが一目ぼれしたときはメガネかけてなかったみたいだけど、学校ではかけてるから素顔がちょっと読み辛いかな。でも確かに綺麗系かなぁとは思う。ちょっとだけ見てみたけど一目見ただけで引き込まれそうな独特の雰囲気の女子だったね。僕が見たときは無表情で読書してたけど、少し近寄りがたい雰囲気もあったかな。もうちょっと表情があるのも見てみたいかな。笑顔とか柔らかい表情が似合いそうな感じだね。目がキッとしてるから、無表情だと近寄りがたいのはそのせいかな」
 あの顔で睨みつけられたら、カタヤマみたいなドMはゾクゾク来るんだろう。おそらく一生わからない感覚であるけれど。
 ふとミサキを見ると、何となく不機嫌そうな顔をしていた。
「彼女の目の前で他の女の子の話するのってどうなのかな……だいたいちょっと見ただけとか言って結構見てるし。主観多いし」
「ある意味職業病なのかな。容姿から雰囲気からいろいろ分析する癖が出来ちゃってて」
「そうじゃなくて……もう解ってるんだけどね、いつものことなんだけどね」
 彼女は口を尖らせながら、ずずずとお茶をすすっている。じと目で僕をねめつけながら呟いた。
「ばか」
 タカハシさんの情報を貰う前なのに、よく解らないが彼女が機嫌を損ねてしまった。
 どうしていいか解らず、とりあえず「ごめん」と謝ったら、ため息一つついて許してくれた。


【32.例えば僕と人物調査・後】

「えっとね、タカハシさんだけど」どことなくミサキはまだ不機嫌そうだけど、続ける。「アキヒトくんの言うとおり綺麗系だよ。誰が一番綺麗かって話題には必ずタカハシさんがでるし。頭も良かったはずだよ。先生に当てられてもすぐに答えるし、テストの答案見ても高得点とってたから。でもタカハシさんは寡黙だから、私あんまり喋ったことなくて、性格とかあんまり知らないんだよね。一度話してみたいと思ってたし今度話し掛けてみる。とりあえずこんな感じで今はほとんどタカハシさんのこと解らないんだけど……」
「ううん、十分、ありがとう」
 ミサキは社交的、と言うより人見知りがなく偏見も少ないため、大抵どんな人とでも仲良くなれる。だから同じクラスの人間なら話したことくらいあると思ったのだけれど、これはタカハシさんの人物像をどう設定すればいいものか。
 とりあえず、ミサキ以外にも尋ねてみる必要がありそうだ。
「今回、カタヤマくん上手くいきそう?」
「どうかな? 単純に成功率から言うと低いんだけどね」
「カタヤマくんも頑張ってるのにね。どうしてダメなのかな?」
「カタヤマは相手にいろんなことを求めすぎてると思う。自分が熱を持って接してるんだからそれに合わせろ、みたいなところがあって、そんなのほぼ初対面の相手からすれば無理なことだし、よしんば付き合えても、カタヤマも相手も熱なんてすぐ冷めるのにね」
 カタヤマの告白が成功して、その三日後にふられたときの理由が『飽きた』だったのにはさすがに同情したけれど。
「長続きさせるためには親友みたいな関係が一番いいと思う。その中で、ときどき求め合えばいいと思うんだ。何事もメリハリをつけないとうまくいかないんだと僕は考えてる」
 今までの例を見てきてもそう思う。カレシカノジョの関係だけじゃ気持ちは続かないだろう。近くにいたいからこそ求め合ってしまうのも、仕方のないことだと思うけれど。
「その点で言うと、僕たち関係はいい感じだと思うんだ。僕はミサキとずっと一緒にいたいし、今みたいな関係がずっと続くといいよね」
「ずっと一緒にいたいって……そ、それって、プ、プロっ」
「あ、饅頭最後の一つ食べていい?」
 言いつつ、彼女の返答を聞く前に食べてしまった。確かこれで食べた数は同じになると思う。
 ふとミサキを見ると、何となく不機嫌そうな顔をしていた。
「あ、あれ、饅頭食べたかった? ごめん、また今度買ってくるからさ」
「そうじゃなくて、それは当然だけど……もう解ってるんだけどね、いつものことなんだけどね」
 彼女は僕をにらみつけて、叫ぶように言った。
「バカ!」
「ご、ごめん」
 今日の彼女は、どうやら虫の居所が悪いようだ。


【33.例えばカノ友と僕のお話】

「アッキー」
 放課後、今日は予定もないので帰ろうとしたら、女子に声を掛けられた。
 その女子の名前はイデメグミと言う。イデさんはミサキの友人だ。
 茶髪にウェーブをかけて、グロスにマスカラ、香水などなど、学校にでも万全の化粧をしてくる子だ。耳にはピアスもつけていて、スカートの丈もこれ見よがしに短い。生徒指導の先生からすれば問題児に当たる女子になろうか。
 イデさんは高校一年生の冬に僕に恋愛相談を持ちかけてきた人だ。
 僕が仲介役になり、イデさんは見事その人と恋人同士になれたのだが、相手はなんとバレーボール部の部長のモチダユウキなのだ。モチダは硬派で真面目な性格をしている(と周りには思われている)から、イデさんとモチダはイメージが違いすぎて不思議がった人も多いだろう。僕もこの組み合わせに慣れるのには少々時間を要した。
「アッキー暇?」
「暇だけど、どうしたの?」
「ユウくんが遊んでくれないのー。つまり暇なの」
「モチダはバレー部部長だし生徒会副会長だしだしで忙しいからね」
「分かってるけどさぁ。最近構ってくれないから寂しくて」
「で、愚痴りに来たの?」
「そ。ということでカラオケいこ。ミサキもバカも誘ってさ。あたしのストレス発散付き合ってよね」
 バカとはカタヤマのこと。可哀想な呼び方だが、否定もできないのが友人として辛いところだ。


【34.例えばイデさんとマヨネーズ】
 イデさんはマヨラーだ。
 ケチャラーが「トマトケチャップがないと生きていけない人種」ならマヨラーは「マヨネーズがないと生きていけない人種」だ。
 目玉焼きにはマヨネーズ派、マヨネーズがあればご飯三杯はいける、マイマヨネーズ常備、食卓の上には業務用マヨネーズをいつも置いておく、肉魚野菜穀物どんな料理にでもマヨネーズをかける、こっちがちょっと引くぐらいのマヨラーである。
「あたしは元からマヨネーズ好きだったけどさぁ。ここまでのマヨラーになるつもりはなかったんだよね」
 買ってきたパンにマヨネーズをかけながらイデさんは言った。
「ミサキがありえないくらいのケチャラーっしょ?」
「だね。初めてミサキの弁当見たときは驚いた」
 彼女は彩りよく飾られた弁当の上に、格子状にケチャップをかけるのだ。その光景を目の当たりにした時にはさすがに顔が引きつった。どう反応していいか解らず、むしろ綺麗にケチャップをかけるなぁと感心するしかなかった。
「ミサキがあまりにもケチャップかけるもんだから、ついついあたしも何かかけなきゃいけないと思ってさ、マヨネーズをかけちゃったわけ。意味もなく張り合っちゃったわけなんだけど、今ではもうマヨネーズなしじゃ無理になっちゃったんだよねぇ」
 それでもケチャラーよりは理解できる。このことはミサキにはオフレコにしておいてほしい。


【35.例えばイデさんと携帯電話】

 イデさんは携帯電話を三つ持っている。
 一つ目は、ブルーメタリックのスライド式携帯。無限プチプチがストラップとしてついているのが特徴。
「まずは友達用。あたしが厳選したダチにしか教えてないんだ。未登録の人からかかってきても着信拒否になってるし。アッキーはこのケータイなんだから感謝してよね」
「あはは、ありがとう」
 二つ目は白のコンパクトな折りたたみ携帯。見た目が安っぽく、かなり傷だらけになっている。イデさんはその携帯を汚らわしそうに指でつまんで持っている。
「これがどーでもいい人用。うぜー奴に番号聞かれたらこっちの教えてる。あと友達用にいれてた奴も、うざくなったら『ケータイ変えました☆』ってこっちの番号教えるし。いつ破棄してもいいんだよねー。金かかるだけだしどーしよ。そうそう、アッキーもこっちに入らないように気をつけてね」
「気をつけます」
 そして三つ目。ピンク色の折りたたみ式携帯。じゃらじゃらとストラップをつけて、むしろ携帯がオマケに見える。
「で、これがカレシ用」
 携帯の裏には、イデさんとモチダのプリクラが何枚もぺたぺた貼ってある。何となくプリクラのモチダが不機嫌そうなのが笑える。
「この三つ目はカレシが変わるたびに変えててさ。別れるたびに目の前で折ってやんの。別れるときって大抵相手がうぜーときだから、怒りのままに折るんだけどやばいくらい爽快なんだよね。今まではケータイの寿命、長くても二ヶ月とかだったから今回のもケータイやっすいのにするか悩んだけど……」
「とりあえず、今回は半年以上経ってるよね」
「うわー、半年以上とかあたし頑張ってるね」
「そこ自画自賛しちゃうんだ」
「あはっ。半年なんて快挙なんだよー」
「良いの買っておいて良かったね」
「だね。このケータイが古くなって取り替えても、またユウくん用になればいいなぁ」
 イデさんはとても嬉しそうに、その携帯を眺めるのだ。


【36.例えばイデさんと難解漢字】

 イデさんの成績は正直芳しくない。ほとんどの教科で赤点だし、授業もサボりがちだし、ギリギリ卒業できればいいと本人も言っているほど。
 そんな中、イデさんは漢字だけにはめっぽう強い。
 モチダ曰く「イデにネタで漢検一級の問題解かせてみたら、八割正解した」とのこと。
「あいつは漢字を書くことだけは得意なんだ。他はからっきしなんだがな」
 モチダに太鼓判を押されても信用できなかったので、僕とミサキは実際に問題を出してみたことがある。
「イデさん、がしんしょうたん、って書ける?」
「んー、はい」と、紙に臥薪嘗胆と難なく書いた。
「ちみもうりょう、は?」とミサキ。
 魑魅魍魎、それもあっという間に書いてしまう。
「ぐんゆうかっきょ」群雄割拠。
「しめんそか」四面楚歌。
「けんこんいってき」乾坤一擲。
「こしたんたん!」虎視眈々。
「がりょうてんせい!」画竜点睛。
 どんな四字熟語を言ってもすべて漢字に変換されてしまう。変換されたところで、こちらが答えを知らないから正誤の判断ができないものもあることは気にせずに、ひたすら四字熟語を出し続けた。
 結局イデさんは一度も悩むことも間違えることもなく、逆にこちらの語彙不足で出題は終了した。ちなみに、ごい、も漢字で書かれた。
「漢字って何か記号みたいでおもしろいじゃん? ちっちゃいころからいろいろ見てたら勝手に覚えちゃったんだよねー」
 素晴らしい特技を持っているなぁと感心していたら、イデさんは続けてこんなことを言った。
「ところで質問なんだけど、臥薪嘗胆ってどういう意味? 他のも何? あ、これって全部四字熟語ってやつ?」
 イデさんは、漢字だけには、めっぽう強い。


【37.例えばイデさんとモチダのお話】

 今では慣れたこの二人のカップルも、付き合い始めたころは、周りを始め、二人の仲を取り持った僕ですら違和感を覚えていた。
 帰宅時、下駄箱の前でモチダと遭遇したので質問をしてみた。
「モチダはイデさんのどこが良かったの?」
 これはイデさんが良いとか悪いとかそういう意味ではなく、今までたくさんの女子の誘いを断って来たモチダが、なぜイデさんを選んだのかという趣旨の質問だ。
「前に一度だけイデと会話したことがあってな。付き合い始める一ヶ月くらい前だったか」
「どこで?」
「薄暗い道端。自販機の脇だったかな」
「なんでそんなとこで?」
「なぜか知らんが、イデがうずくまってた。それで何事かと思って少し会話したんだ。他愛のない会話だったんだけど、付き合うならこういうコがいいなと思ったんだ」
「そしたら、イデさんがちょうど告白してきたと」
「そういうこと」
「それだけで気に入るなんて、自販機の横でいったいどんな会話をした――」
「ユウくーん!」
 と、外からイデさんの声が聞こえた。外から見るとこちらに向かって大きくてをふっているイデさんの姿があった。
「悪い、今日は久しぶりにイデと一緒に帰る約束をしてるんだ。またな」
 質問に答えてくれる前に、モチダはイデさんのもとに行ってしまった。腕を組んで歩く姿が幸せそうだ。
「当人が幸せなら理由なんてどうでもいいのかな」
「何のこと?」と、後ろからミサキの声がした。
 僕はミサキを見た。モチダとイデさんの馴れ初めを知りたいけれど、僕とミサキの馴れ初めを誰かに話したいなんて思わないし。
「ん? どうしたの?」
「なんでもない。ミサキ、一緒に帰ろう」
「うん」
 無理に尋ねるのも野暮ってものだろう。


【38.例えばイデさんと生徒指導】

 イデさんは、その容姿ゆえに生徒指導の先生からは目の敵にされている。
 髪を派手な茶色で染めている、髪が規定値より長い、ピアス穴を空けている、アクセサリーを授業に障るほどつけている、スカートが規定値より短い、口紅を塗っている、爪をいじっている、その他化粧を極めている。身だしなみに関する校則にすべて反していると言っても過言ではない格好をしているもんだから、注意したいだけの先生はまず彼女を目の敵にする。
 今日もイデさんが先生に捕まり注意されていた。
 相手は体育の先生、通称ゴリ。いやまた、この先生がそこらの漫画にでも出てくるような古典的なの体育会系で、筋肉質でとても汗臭く、考えも古臭い。イデさんのような格好をしているとまず飛んできて拘束される。しかも教室を出てすぐの廊下で注意を始めるもんだからうるさくてたまったもんじゃない。
 先生に注意されているイデさんは先生の話など聞かず、はいはいと適当な生返事を返している。こんな生返事でもどうにかなるんだから、ゴリは本当にどうしようもない。
 先生は怒鳴り散らしてようやく満足したのか、その場から立ち去った。取り残されたイデさんだが、雰囲気でイライラしているのがわかる。あれは誰にでもいいから愚痴りたいという時の雰囲気だ。
 逃げようと思ったときには遅く、僕はイデさんに補足されていた。
「何逃げようとしてんの?」
「え、いや、その」
「あー、もう! 聞いてよ! ゴリのやろうありえないくらいウザいんだから!」
 捕まってしまった。近くにモチダがいればそっちに預けてしまうのだが。
「今どき髪いじるのなんかふつーに決まってんじゃん。アホみたいな化粧してとか言ってるけど、お前の面の方がアホヅラだし! 鏡みてみろっての! しかもあたしだけにけちつけるんじゃなく、ユウくんにもいちゃもんつけたし……いつかぜったいぶっ飛ばす!」
 ゴリに絡まれるのとイデさんに絡まれるのとでは当然後者の方がましなんだけど、それでも遠慮したい絡みであることに違いはない。
 しばらくするとイデさんの気が済んだのか「今日はもうサボる」と言って帰ってしまった。
 チャイムが鳴った。僕は教室に入り真面目に授業を受ける。そしてイデさんが横切ったグラウンドを見た。
 彼女がイライラしているのは、ゴリに絡まれ、汗臭い顔をずっと見なければならなかったからだけではない。
 自分の評価が、彼氏であるモチダの評価をも下げていることを彼女は知っている。ゴリだけでなく一般生徒からも、自分を通しての僕たちの、モチダの評価が芳しくないことは知っている。
 そして、僕たちやモチダがそんなことまったく気にしていないことも、痛いほど知っている。だから彼女は機嫌が悪くなる。
「難しいよね」
 呟き、僕は黒板に視線を戻した。白墨で書かれた数式をノートに写し取った。


【39.例えば僕と一人称】

「そーいえばさぁ。どしてアッキーって一人称『僕』なの?」
 僕、カタヤマ、モチダ、ミサキ、イデさんの五人での昼食中、イデさんが疑問を呈してきた。
「そういえば、僕なんて一人称使ってる人は少ないから気になるな」とモチダ。
「私も前々から気になってたんだよね」とミサキ。
「どーせあれだろ。ちょっと目立とうとして一人称変えたらそのまま定着しちゃったとかどうよ」とカタヤマ。
「それあるあるー。一時期あたしも拙者って使ってたし」
「私はそういうのはなかったかな……というよりメグ、一人称の選択がおかしいと思う」
「俺もないな。将来『私』は使おうと思ってるけどな」
「状況で変えようとは思うけどなぁ。俺は『俺』のまま変えるつもりもないね」
 一人称について和気藹々と話し出した四人を見て、これで一人称『僕』の由来を話さずに済むと思っていたら、
「で、どうなの?」とイデさんが僕を見たせいで、四人の視線が一斉に僕に集まった。何か悪いことをした気分になってしまう。
「特に面白いことはないから、聞く必要はないと思うよ?」
「面白くないならいいじゃーん。せっかくだし話しちゃいなよ」
 過剰なまでの期待の眼差しが襲ってくる。とてもやりづらい中、僕はぽつぽつと語りだす。
「俺には七歳上の姉さんがいるんだけど……」
 四人はうんうんと一斉に相槌を打つ。とてもやりづらい。
「その姉さんが、どうしても僕の一人称を『僕』にしたかったらしくて、ちっちゃい頃から強制されてて、俺とか使おうもんならひっぱたいて来たわけ。下僕にしたいからとか、『僕』の方が『俺』より従順そうとかそんな理由だよ? 姉さんには今まで一度も勝ったことがないから反抗もできなくて、反抗してもあっさり負けてさらに酷い扱いされるし。まあ、こんな感じで僕の一人称に癖をつけた姉だけどさ、この前、『なんで一人称が僕なの?』って聞いてきてさ……。もういいんだけどね、僕を使うのも慣れたし、変えようとも思わないから」
 思い出したらついでにため息も出てきた。気まぐれでわがままな姉なのだ。
 ミサキは姉に会ったことがあるので、なるほどという顔をしている。他の三人はちょっと哀れみの視線を僕に向けていた。
「アッキーのお姉さんにあってみたいかも」
 とイデさんが口走ったので、僕は机に額をつけて止めてくださいと懇願した。
 これ以上被害者を出すのはこりごりです。


【40.例えば僕と人物調査2】

 高校二年生の秋。僕は今、友人が一目ぼれしたというタカハシトモカさんについての情報を集めている。
 正直なところ、ミサキの情報だけでは心許ない。ミサキは人を嫌いになるということを知らないタイプなので、対象人物の負の情報を持っている可能性が極めて低いのだ。
「ミサキってそーゆーとこあるよね。なんてーの? 人間大好きって感じで、誰とでもすぐ仲良くなっちゃうの。あたしがうぜーって思ってるやつでも『いいひとだよ』とかゆーし」とイデさん。「まあそのおかげであたしはミサキと友達になれたからいいんだけどね」
 僕は、イデさんとミサキが仲良くなった経緯を知らない。一年の一学期に、ご飯を一緒に食べて仲良くなったというが、クラスは違うし接点などなかったはずなのだが。
 タイミングさえ合えば、いつか聞いてみたい事柄だ。
「で、あのバカが好きになった人が、タカハシトモカさん? っていうの?」
「うん。この人」と写真を見せた。「ミサキのクラスなんだけど見たことあるかな?」
「あー、こいつ見たことある。あたしがミサキとしゃべってるときに、ペンが転がってきたから拾ってあげたときに、礼も言わずにあたしの手からぶんどったやつじゃん。何? バカはそんな奴を好きになったわけ? あたしはその件でこいつとは絶対仲良くなれないって思ったくらいなのに。周りの人もこのコのこと避けてたみたいだし、周りもこいつと関わりたくないくらい性格酷いんだよ。いじめられてはないのかな? とは思うけどわかんないねー。女子って怖いし。まあこんな感じでー、あたしの印象は最悪だね」
 想像以上の酷評だった。
 イデさんは、人に対して大抵良くない評価を下すのだが、ここまでひどいのは初めて聞いた。よっぽどタカハシさんの態度が気に食わなかったんだろう。
「情報ありがとう」
「ん、いいっていいって。ギブアンドテイク!」
 ちなみに、モチダ周りの女性情報をイデさんに提供するのが、僕側のギブである。
 タカハシさんについての情報もだいぶ集まってきた。
 本当はあと一人、情報を聞きやすい女子がいて、本来なら一番情報をもらえそうなのだが今回はやめておく。もっと情報を得たいなら、僕が直接アクションを起こす必要がありそうだ。


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HR(独り言ルーム)

31.例えば僕と人物調査・前
 初の前後編。
 ちかごろ、一話の文章量も多くなっている気がする。
32.例えば僕と人物調査・後
 プロポーズ! ハセガワは鈍感力は偉大です。
 いやー、この話いつかやりたかったんですよ。
33.例えばカノ友と僕のお話
 イデメグミ。漢字で書くと井出恵。
 イデとモチダのカップルは作者の中で一番の期待株。
34.例えばイデさんとマヨネーズ
 マヨラーです。
 作者は微マヨラー。ラー族は後でいっぱいでてくるよ!
35.例えばイデさんと携帯電話
 携帯折るなんて携帯勿体無い……。でも一度やってみたい。
36.例えばイデさんと難解漢字
 魑魅魍魎から派生したネタ。一芸です。
37.例えばイデさんとモチダのお話
 モチダとイデさんの出会いはEXで。
 僕とコンドウさんの話は本編でちょくちょくやります。
38.例えばイデさんと生徒指導
 主題その3の一部。
 容姿的に、ファッション雑誌の表紙のモデル以上に飾ってると思ってくださればOK。
 ごめんね。作者ファッションに疎くてごめんね。
39.例えば僕と一人称
 姉は出すか出さないか正直微妙。
 名前はちょくちょく出します。
40.例えば僕と人物調査2
 イデさんとミサキの話はEXでやります。
 EXでやりたいこと多すぎ><

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