HR
 パーフェクトの外伝をふと書き始めたら、
 美奈津先生が、物語の本編最後で「私たち結婚するの」と発言していたことを思い出してしまったため、中断。
 書く前に思い出せよ、俺!
あまり気にせず読んで下さい。結婚してない前提で読むとOK。
 はっきり言うと黒歴史です。

 ※注 パーフェクト本編完璧ネタばれ

 パーフェクト外伝。

 春のソレイユ


 三月。
 春の息吹が感じられるようになってきた時期。
 俺は部屋の窓を開け放つと、さわやかな空気を思い切り吸い込んだ。
 合格発表日が過ぎて、俺たち三人は、赤い門の大学に合格した。
 まぁ、この物語は大学に入ることが目的の桜チックな物語じゃないから、どうでもいい話ではあるんだけど、とりあえず近況報告。
 俺が江津を選び、俺たちの三角関係が終焉したその数ヵ月後、栄美と修二と香甲斐の三角関係も終わりを向かえる。
 栄美が修二を選んだ。
 理由は「お姉ちゃんみたいに凄い人に付いていく自信が無い」から。
 でも江津が言うには、決着がつく前に、すでに栄美は香甲斐より修二の事を意識していたみたいだから、理由は単なる後付けだろうと言うことらしい。
 気づくの遅いよねと江津が愚痴っていたけど、俺も似たような状況だったから苦笑するしかなかった。
 そうそう。近況と言えば、一番驚いたのは去年のクリスマス。瑠那と香甲斐が一緒に出かけたと思ったら、付き合い始めたのだ。
 三家族総出の三角関係だったから、瑠那と香甲斐が知り合う機会はたくさんあったことは確かだけれど、思ってもいない取り合わせでただ驚くばかり。
 俺には驚きの出来事だったのに、江津に言わせれば「近々そうなると思っていた」との事。瑠那と香甲斐が『負け組同盟』とか言っていたのは知ってたけど、そこまで仲が進展していたとは。
 俺が鈍いだけかもしれないけど、つくづく江津には敵いそうに無い。
 もう一度外を見ると、雲ひとつ無い快晴だった。特に予定も入ってないから、庭を散歩してくつろごう。
 俺がきびすを返すと、扉を叩く音がした。
「入っていいよ」
 顔を出したのは執事。恭しく頭を下げた。
「江津様がお見えになってます」
「江津が?」
「はい」
 執事が嘘をつくとは思えない。だからこそ余計に訝る。
 江津が俺の家を訪れることはまったく不思議ではない。不思議なのは、俺に何の連絡もなく訪れたことなのだ。
 いつもなら、急に来る事になったとしても、事前に一報はある。今は連載当初とは違って、携帯と言う文明の利器があるのだから、それぐらい容易なのに……。
「……通して」
 悩んでも意味がないと思い、執事に言った。執事はまた頭を下げると、扉を閉めた。
 しばらくして、もう一度扉がノックされる。
「修斗、入っていい?」
「いいよ、入って入って」
 扉が開いて、江津がひょっこりと顔を出した。
「やっほ。ごめんね修斗、急に来ちゃって」
「うん、大丈夫。こっちも暇してたから」
「それなら良かった」
 相変わらずかわいい江津だが……素で惚気てしまった事は幾ばくか後悔したが、江津の様子が少しだけおかしい。
 常人には気取られない程度の挙動だけれど、俺にははっきりと読み取れる。
 どうして江津は扉の前から動こうとしないのか。後ろを気にしているのか。それは、何かが扉の後ろにいるからだろうか。
「江津、その扉を閉めて、ついでに鍵もかけて。何人たりとも入れないようにしようか。今日は天気はいいけど虫が出るみたいだから、部屋の中で今月末に行く旅行の話でもしようよ」
「修、そうか、そんなに俺のことが嫌いか、嫌いなんだな」
「嫌われたくなかったら無意味な行動は止めて、普通に出てきたらどうっすか」
 苦笑する江津の後ろから姿を見せたのは、隼先。
 隼也健次。俺らの学校の先生で、俺の家の隣に住んでいる。美奈津先生と付き合っていて、だけど学校では秘密にしているらしく、隼先はそういうことに対しては煮え切らない男だし、結婚するのはまだまだ後のことになりそうだ。
 とにかく、二人を招き入れ、窓近くの机に座らせる。
「で、江津を利用してここを訪れた理由は?」
 隼先は妙に緊張した顔つきをし、さらに一張羅を羽織っている。いつもなら気軽に訪ねて来るくせに、今日に限って江津を半ば無理矢理利用して訪れたのだから、何かが起こらないはずがないのである。
 俺は二人に出す紅茶の用意。水をやかんに入れると、沸騰するまで過熱する。
「別に訪ねにくい理由でも、隼先だったら部屋に上げるよ」
「そりゃそうなんだけどな。理由が理由だから、桐生にも手伝ってもらわないといけないと思って」
 水が沸騰したので、ティーポットにオリジナルブレンドの茶葉を入れ、熱いお湯を注ぎ込む。
「江津は理由聞いたの?」
「ううん。私も何度か聞いたんだけど、先生がなかなか教えてくれないの」
「江津を呼んどいて教えてないのか……」
 隼先をじとりと睨むと、隼先はうっと唸り、顔をしかめる。
「睨むなっての。解ったよ。解った。話す話す。いいか、心して聞けよ」
 ティーカップを温めるのも忘れない。それらをトレイに乗せると、二人が待つ机に持っていく。
「実はな。おととい。美奈津さんと結婚した。式は挙げてないけど。籍を入れた」
 ―――――――――――――――――――は?
 俺は、左足に右足を引っ掛けてしまった。前方に繰り出された上体から、トレイに載っていた品物が分離し、つまり熱湯の紅茶が宙を舞う。
 俺の前方には江津。このままだと江津が火傷してしまう。それだけは避けなければいけないと、トレイを使って江津へ向かったお茶を弾く。
「ぎゃぁーーーー!!!」
「江津、大丈夫か!」
「うん、私は大丈夫」
「顔面に! 胸に! 股間に!」
「良かった。あー、焦った。人に掛かったら一大事だもんなぁ」
「あの、修斗、ほら、私は大丈夫だけど」
「俺の息子が! 息子が! 生きろー! 死ぬなー!」
「絨毯のことなら気にしないで。江津が無事だったならオーライだよ」
「修斗、それはさすがに……」
「死ーーんーーだーー!」
「煩い!」
 コントの間にバケツに汲んだ水を、隼先にぶちまける。隼先の一張羅は瞬く間にびしょびしょになり、隼先は沈黙した。
 水溜りのようになった床を見つめて、呆れたように江津が一言。
「だからやりすぎだって言ったのに……」
「俺もそう思ったけど、やっぱりテンポは大事にしないと」
 うむ、我ながら良くわからない説明だ。
 と言うか、久しぶりのパーフェクトだから、作者がどういうテンションで書いていいかいまいち把握できていない所為だと思う。
「……修、水も滴るいい男を演じていたいのは山々なんだが、シャワーと着替えを貸してくれると助かる」
「それは良いけど、火傷は平気?」
「後遺症は残らない程度だな。駄目だったら修から医者料をもらうから、安心して火傷を負えるよ」
 医者料かよ。まぁ、こんな細かい所に声を大にして突っ込む必要もあるまい。
 俺がちょっと派手目の服を渡すと、隼先はそそくさと俺の部屋に備え付けてあるバスルームへと向かった。
「覗くなよ」振り返って、隼先。
「誰が」俺。
「江津が」隼先。
「しません!」江津。
 隼先は何故か満足そうに、風呂場へと消えた。ほんと、このまま永遠に消えて欲しい。
 隼先は俺の家のことを気持ち悪いほどに熟知している。この前訊いたら、なんとすべての監視カメラの位置まで知っているようで、はっきり言って把握具合は俺と同レベルだ。
 隼先とは古い仲とはいえ、ここまで情報が漏れていると空恐ろしい感じもする。
 ちなみに、江津の把握具合は迷子にならない程度。これだけ解っていれば十分である。
 とにかく、濡れた絨毯をどうにかしなければいけない。
 固定されてる絨毯だから、取り外しは不可。仕方が無いので、江津にも手伝ってもらい、タオルを大量に敷き詰めた。机も綺麗にして、運良く割れなかった食器も片付けた。
 これらは使用人にやってもらえば楽なのだろうが、しかし頼りすぎてしまうと、将来この家を出たときに苦労することになるから、なるべく自分でやるようにしている。
 最近では夕食以外の炊事、洗濯、家事一般はすべて自分でやるようになった。夕食は出ないと親に怒られるし、大学を出たら家業は香甲斐に押し付けて家を出るつもりだから、ささやかな親孝行も含めて家族で一緒に食べることにしている。
 ちなみに、押し付けることは香甲斐も何となく解っているみたい。俺は直接言ったことがないし、香甲斐からもそんな事言われたことないけど、兄弟としての以心伝心が働いているのだろう。
 さてと、ひとまず場所は移動しないといけない。タオルが敷き詰められた場所でくつろぐなんてさすがにやりたくない。どうしようか悩んでいると「テラス出ようよ」と江津の一言。それに従い、俺らはテラスに出た。
「ちょっと寒いけど、太陽が暖かいね」
 江津が伸びをしながら、笑顔を見せた。俺もそれに倣って伸びをする。
 テラスの椅子に腰掛けると、しばし俺らは日光浴を嗜んだ。
 ――って、重要なことを忘れてた。
「なぁ江津、隼先結婚するとか寝ぼけた事言ってたけど、本当かな?」
「どうだろうね……突然と言えば突然だけど、いつそうなってもおかしくない状態ではあったし」
 隼先と美奈津先生が付き合い始めてから二年近く経った。年齢も程々だし、不和もなく何度もお忍びのデート(何度か尾行した(美奈津先生は気づいていたみたいだが))をするほど仲が良かったし、結婚することがおかしいわけじゃない。
「それはそうなんだけど、隼先がプロポーズをできるような性格をしてないと思ってさ。美奈津先生は隼先から言葉をもらいたいタイプだろうし……」もしかして「できちゃった結婚とか」
「まさか。隼也先生、あれでもそう言う所はしっかりしてると私は思うよ」
「江津の言う通り。俺はしっかりしていたんだ」
 ……隼先、会話に割り込むのが好きなのだろうか。そもそも気配もなくどうやって背後に立ったんだ?
 隼先は体から湯気をたたせながら、俺らの後ろに陣取っていた。
 隼先が着用しているのは、黒地に白で困苦欠乏と四字熟語が刻まれたTシャツ。我ながら良いセンスである。
「俺はそれをするときにはきちんと付けてたし、危険な日は避けていたはずだったんだ。なのに、冬休みごろから美奈津さんの様子がおかしくて、酸っぱい物を良く欲しがって、二月上旬に『できちゃった』ってさ……。まぁ、俺も責任を取って、おまえらの合格発表を以って籍を入れることにしたんだよ。でさ、籍を入れた次の日だよ。美奈津さんが、『できちゃった』発言は嘘だって……」
 がっくりとうな垂れる隼先。
 つまり、美奈津先生のできちゃった発言は、隼先を結婚へ向かわせるための嘘だったと言うことか。
「嘘だと気づかなかったのか?」
 隼先は椅子に座り、大きなため息をついた。
「まさか嘘だとは思わなくてな。妊娠検査薬も陽性を示していたし……」
「うわ……」
 俺も江津も絶句している。嘘をつくのにそこまでやるだろうか。ちょっと隼先に同情したくなってきた。
「でも隼也先生、いつかは結婚するつもりだったんですよね?」
「桐生、それは愚問ってもんさ。ただな、そういう大事なことは、俺から切り出したかったんだよ。結婚したかったからこそ、こんな形ではなくて、もっと感動的なプロポーズをしたかったんだ」
 なんか、本気で落ち込んでいる隼先。
 俺も江津も、どんな慰めの言葉をかけて良いのか解らず黙っていると、隼先がまっすぐ俺の顔を見据えてきた。
「でだ。そこまではもういいんだ。後悔しても意味ないしな」
 もっともな発言。
「しかし、これ以上イニシアチブを握られているわけにも行かないから、何とかしようと思って、今日はここに来たんだ」
 ここに来たのは結婚報告のためじゃなかったのか。確かに、それだけなら江津を利用する必要はない。俺は少しずつ、警戒心を高めていく。
「一応、俺と美奈津さんは、式を挙げないことで意見が一致して、……って言うのも、結婚したことが生徒にまで広がっちゃうと、二人が学校で先生やるには面倒なことになるからな。だけど、やっぱり女性は結婚式を挙げたいと思うんだ」
 何となく、隼先がここに来た理由が解ってきた。
「修、たしかお前んちに、チャペル、あったよな」
「ありますよ」
「貸してくれ。そして俺らの為に、目立たない程度に盛大な結婚式を開いてくれないか?」
 却下。と即答しようとして、俺は言葉を飲み込んだ。
 江津の輝いたその瞳。もしかしたら結婚式を見られるかもしれないと言う期待の眼差し。
「どうだ、桐生も見たいだろ、俺らの結婚式。将来お前たちもそうなるんだろうから、いい予行練習になるぞ」
「はい、美奈津先生のウエディング姿とか、絶対綺麗ですよ!」
 隼先は一言で江津を引き込み、完全に味方に取り込んだ。
 やられた。江津を呼んだのはこの為か。
「修、いいだろ。何も全部お前に用意させようって訳じゃないんだ。場所さえ貸してくれれば、料理とかの費用は全部出す。それに客は俺らの親戚と延暦寺家、桐生家、鮎河家だけにする予定だから大きな式には絶対ならないと言うか、恥ずかしいからしない」
 家にあるチャペルは親が酔狂で作ったもので、貸し出しなんぞしていない。それでも毎日使用人が掃除をしているから、使えないことは無いけれど……。
「頼む。後生だ。俺を男にさせてくれ!」
 使わせたくない理由は特にない。あるとしたら、そんな大事なことをはきちんとしたところでやれと言う意見だけで、当人が望むなら反対意見はなくなるのだ。
 さらに江津が隼先の肩を持っているし……。
「解りました。ただ、親が了解をくれたらですよ」
「修、恩に着る」
「先生、良かったね」
 複雑な心境の俺とは裏腹に、江津と隼先は二人で喜び盛り上がっている。
 本来なら敷地内でイベントを行うのは好きじゃないんだけど。
「そうだ、隼也先生」
 江津が思い出したように、改まって言う。
「結婚おめでとうございます」
 これには、隼先も真面目な表情になる。
「うん、ありがとう」
 そして、二人はちらりと俺を見た。
 まったく……。
 まぁ、これぐらい、素直に祝ってあげよう。
「隼先、おめでとう。幸せになれよ」
「おうよ。期待してろ、模範となるような幸せ家族になってやるから」


 チャペルの使用許可はあっさりと下り、結婚式の日程も決まり、あとは本番を迎えるだけとなった。




 HR
 ……俺はアホか! アホだ!
 何度も言うけど、書く前に気づくべきだったな……。

 まぁ、一応この後予定していた展開を書くと……。

 式当日。
 修斗と江津が三月末には旅行に行ってしまうため、その前に式を挙げられるように急ピッチで準備をした結果、何とか式場が出来上がった。
 これは美奈津先生へのドッキリでもあるため、隼先は美奈津先生をデートに誘い、最後に修斗の家に向かい、チャペルに入って結婚式を挙げるという計画を立てている。

 ――って、詳しく書きすぎてるな。簡潔に書くと。

 結婚式がばれないように、二人はデート。修斗、香甲斐、秀二が尾行。何故かメンインブラック。
 だけど美奈津先生は鋭いから何度も隼先が何かを隠していることに気づきそうになる。その度に三人が頑張って気を逸らさせる。
 それでも、最後の最後で尾行していることがばれて、美奈津先生を拉致する格好で教会へ。

 その頃、江津、瑠那、栄美の三人がウエディングケーキ作りを試みていた。
 この時の視点は何故か修斗。神視点であるw
 栄美がシャンパンタワーやりたいとか言い出してグラス割ったり、瑠那が砂糖と片栗粉を間違えるへまを犯し、江津はゴキブリを殺そうと包丁を振り回して完成したケーキをカットしてしまう事件がおきたりと、騒動を起こしながらも何とか完成。

 二つのグループの任務が無事(?)成功し、結婚式本番へ。
 美奈津先生は感動し、マジで涙を流す。でも皆疑う。美奈津先生はさらに泣いてしまう。
 とりあえず結婚式の主役がドレスアップ。
 参加者は、隼先の両親、美奈津先生の両親(わざわざ沖縄からご苦労様)、そして修斗江津瑠那香甲斐栄美秀二。
 結婚式は粛々と進み、その中で、六人が会話。
 結婚式は和風洋風? 結婚式挙げるなら三組同時だよね〜など。
 しかし隼先のぎこちない挙動を笑い始めると、隼先が一喝。隼先はそれで踏ん切りがついたのか、挙動が落ち着き格好良くなった。
 そして誓いのキス。
 ブーケトスへ。
 隼也美奈津先生がブーケを投げると、女性三人が突進。もつれて大転倒。
 危うく修斗に渡りそうになるが、栄美のキックによりまた宙を舞う。
 ブーケを賭けた熾烈なバトル勃発。
 するかと思いきや、美奈津先生がブーケを奪い取り、三つに分割、三人に渡す。
「せっかくの結婚式を台無しにしないでよね」と笑いながら。

 披露宴は省略。

 いつかこんな式挙げようねと江津。
 そんな感じでハッピーエンド。

 後日談。美奈津先生に今度こそ子供ができる。
 と言うか、できちゃったと言うのは本当だった。嘘から出た真だったと言うオチ。


 ってな感じになる予定だったのに!
 ……ふぅ、一度矛盾を感じてしまうと、物語が書けなくなる人ですからね、俺。
 これは頑張って直せるような矛盾じゃないしな。さすがに。 


2006 4 9

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