パーフェクト外伝2
[27、5] 結局の後 関係ないただのお遊び話
「……やっぱり前言撤回」
「へぇっ?」
俺の唐突な発言に、栄美は不可解な声をあげた。
「いや、だって悩むぐらいだったら前言撤回しといた方がいいかな……って」
「先輩の馬鹿!」
「へぇっ?」
今度は俺が不可解な声をあげる。
「せっかく修斗先輩の発言録音してたのに!」
よくみると、栄美のポケットから、カセットプレイヤーがのぞいている。
「今のでふいになっちゃったぁ……。高く売れると思ったのにな」
「誰にだ?」
「でも、編集すればいいか」
完全に俺の疑問を無視する。
でも、こんな事に気付かないなんて、俺はやっぱりよほど動揺していたんだろう。
―――自分のキモチを、動かそうとしていた事に。
とりあえず、俺は華麗に手先を操り、栄美からそれを奪取する。
「まさか……さっきまでの栄美の話って、嘘か? 俺から、『二人の事が好きだ』という言葉を聞き出すための、誘導?」
「嘘だったら……良いんだけどねぇ……」
そう言って、栄美は、ばっ、と手を伸ばし、俺のプレイヤー――といっても、さっき俺が奪取した――を掴もうとする。
俺はいとも簡単にそれを避けた。栄美の手は虚空を捕まえる。
栄美が小さく舌打ちをしたような気がしたが、聞き流しておく。
栄美の先刻の言葉はからすると、さっきの話は本当なんだろう……。
……そうだ。
俺は、プレイヤーを再生してみた。俺の予想が当たっていれば……。
―――聴こえたのは、ただの雑音だった。
それを確認したので、栄美に返す。栄美は呆然としていた。
「なんで……?」
「周りが五月蝿すぎたんだろ?」
休日って言うのは、アミューズメントパークに行くものではない。でも、その日にしか行けないのがまた難点でもある。
アトラクションが動く音。俺らみたいに遊びに来ている人たちの会話。
それらで、俺らの会話は相殺されていた。と、俺は解釈する。
「でもさ、修斗先輩? さっきの気持ちは本当なんでしょ?」
「ああ、前言撤回は本当の気持ちだ」
「ちゃう!」
分かっているが、何となくボケてみたい衝動に駆られた。タイトルがお遊び話だし。
「前言撤回を前言撤回して下さいよ」
「栄美……敬語かタメ語か。どっちかにしようよ……」
「じゃあタメ口」
…………まぁ、良いけどさ。俺あまり敬語好きじゃないから。
「で、前言撤回を前言撤回してよ」
「だから……」
「前言撤回を前言撤回してよ」
「……それは……」
「前言撤回を前言撤回してよ」
「………………」
「前言撤回を前言撤回してよ」
「だー! 某小説『オー○ェン』みたいなノリで訊いて来るな!」
「いいのいいの。で、するの?」
俺は深くため息をついた。
あの二人が好きだ。という事実は、否定しようとしても、もう出来ない状況に頭がなっている。
「するよ、前言撤回。俺は、あの二人が―――」
俺は栄美が不穏な動きをしていたので、プレイヤーを奪ってから、言う。
「好きだよ。困るぐらい…………」
本当に、どうしようか、困る。
どちらを、選べば、いいのだろう?
この気持ちを好きと気付いてしまった……今からが、怖い。
じぃぃぃぃぃ……
かすかな音が響いている。
その音の根源――つまりプレイヤー――に目を向けた。
録音の所のボタンが押されていた、そのプレイヤーに。
栄美はしたり顔になっている。
プレイヤーは俺の口の近くにあったはず……それだったら、完全に言葉を捉えていただろう。
取り出しボタンを押す。カセットを取り出す、地面に叩きつける。そして潰す。
四つの動作を難なくこなした俺は、栄美に空になったプレイヤーを返した。
「修斗先輩の鬼」
涙目でねめつけられる。いや、俺が悪いんじゃなく、自分が悪いんだろうよ。
「ここで私が泣いたら、修斗先輩どういう立場になるかなぁ……」
めっちゃ涙声で言いながら、俺を上目遣いで見て、鼻をすする。
どういう言う立場って、そりゃあ、……俺が一方的に悪くなるだろう……。
「……栄美? ……それは、何を強請っているのかな?」
「ねだるを漢字で言うとは、なかなか」
何でこう番外編だと、読者側からの意見が言えるようになるのだろうか? まぁ……作者が作者だし。
「で、何を強請っているんだ?」
「とりあえず、アイス奢って下さいよ。暑くて暑くて」
「とりあえずとはなんだ?」
「さっき、欲しい人形見つけたんですよぉ」
俺の最大の敵は、栄美であることを確認した今日であった。
本日の出費。
6人分のチケット―――40000円
アイス5個分―――――1000円
人形―――――――――9000円
計 50000円……うぁ……さすがに大きいな。
HR
好きだなぁ、こういうノリの話。
仮にも外伝ですよ。何にも本編に関係してないし。
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