[27] 結局

 

 人生などこんなもんさ。

リスクとリターンは表裏一体。リスクが軽ければ見返りは……

 違う、罪と罰だ。

 罪を犯せば罰を受けるのは当然のこと。

 この腹部の波打つ痛みは、その罰だな。

 

 

 根性と気迫で俺が強引に決定した事とは、まぁ……連れを増やしたという事で……。

 そう、香甲斐と秀二と栄美も誘ったわけよ。もちろん江津と瑠那には事情を説明しましたよ。六人で行くとなると水族館は物足りない! と、どういう思考から生まれたのか良くわからない意見を誰かが発したので、シーパラダイスみたいな、遊園地兼水族館のような所に行く事になった。

 もちろん俺の自腹で。

  

 二人は初めから不機嫌だった。

 江津は俺と目をあわせようとしないし、瑠那は殺気が体中から放出されている。

 まぁ、コレが罪だろう。

 二人を怒らせた。

 全部俺のせい。だよな……。

 自己嫌悪に陥っている俺と、完全にキレている二人を後目に、あの三人はのん気だった。というか、楽しんでいた。

 あいつら、完全に俺の状況を楽しんでいた。

 他人の不幸は蜜の味とは言ったもんだね。

 なかなか、的を得ているよ。……苦笑。

 

 そんな気まずい状況のまま、俺らはたどり着いた。

 そこで突然、瑠那がある提案を発したのだ。

『トリプルデートしよ』

 と。

 まぁ、男三人、女三人だからちょうどいいのだが。

 で、何となく皆賛成し、グーチョキパーで分かれる事になったのだ。

 瑠那と秀二になったらやり直しという条件の下行われ、出た結果は。

 瑠那と香甲斐、江津と秀二、栄美と俺。

 いやはや、一番喧嘩が起きないような組み合わせとなったわけ。作者の陰謀だね、これは。

 多分というか絶対、瑠那は俺と二人きりになろうとしてその提案を発したのだろう。もちろん江津にもそのチャンスを与える事となるのだが、そこら辺は問題じゃなかったらしい。

 結果、どちらとも二人きりにならなかったのだが。

 

 そのせいで、瑠那は怒髪天だった。

 ギラリと俺を睨み、そして身構える。

 パンチが飛んでくると踏んだ俺は、とりあえずその制裁を受ける事にした。しかたがないことだろうと。

 もちろん、あまり痛くないように体に力を入れるつもりだったが。

 ……しかし、パンチは飛んでこなかった。

 瑠那は最後にキッと俺を睨み、そして香甲斐の手を掴み、その場を去った。

 香甲斐は少し顔がひきつっていた。

 そこで俺は気を緩ませたのだ。

 その時、わき腹に痛打が飛んできた。

 全くの無防備だった俺は、少しよろめき、何とか意識を保てた。

 横を見ると、江津がいた。

 江津も俺を睨み、そして秀二と一緒にその場を去った。

 栄美は俺の隣で、笑いを押し殺していたが、一時後、爆笑していた。

 どこか、自嘲笑も混じっていたようだった。

 

 

 短めの説明だが、しかる訳で、俺は栄美と歩いていた。

 なんかぼぉっとしていて、しかも腹部にダメージが残っていたので、始めの方は栄美に連れられるまま様々な場所に行った。

 ぼぉっとしていた理由は、ずっと二人の事を考えていたからだと思う。

 二人の怒った顔を想像すると、居た堪れない気分になる。

 ―――なぜ、俺は応えられないのだろう。って……

 実を言えば、あの二人のどちらかと歩きたかったような気がする。いや、気がしただけだよ。

 なぜ、二人は、同じ日のチケットを買っていたのだろうか。いや、作者の陰謀といってしまえば、それで終いなんだけどな。

 とにかく、別日のを買ってくれれば、違う日に行けたのだ……。

 あ……れ? これって……ようするに、

 ―――フタマタ?

 考えた事を、栄美に言う。

 何か、聴いて欲しかった。わだかまりを解かしたくて。

 すると栄美はこう答えた。

 

「フタマタね……ははっ、私も言われた」

 その声は、ジェットコースターが通り過ぎる音で掻き消されそうになったが、何とか声を拾えた。

 ……………………!?

 やっぱり俺の咀嚼時間は長いなぁ……。

「誰に?」

 形式上の問い。

「友達」

 ふぅ、と栄美はため息をつき、そしてどこかを見たかと思うと、俺の腕を引っ張る。というより、引っ付く。

 表情を一変させ、にぱっと笑った。

「座りましょーよぉ。修斗先輩」

 激甘な声で言ってくる。なんというか、猫なで声とでも言うのか。

 当然ながら不審に思ったので、辺りを見渡すと、知っている男女のペア――といっても両方後姿――が、二組見えた。

「よし、少しぐらい嫉妬させた方が面白いもんね」

 栄美が引っ付いたまま小さくガッツポーズをとった。

 ……やはり、栄美は敵に回したくないタイプナンバーワンだろう。ああ、知り合いにそういう人がいる俺も俺だな。類は友を呼ぶというし……俺もそういう類いなのか? 自分で言った事に何突っ込んでんだか。

「ほら、先輩、すわろ」

「座りたいのは本当だったのか?」

「もち」

 半ば強制的に、俺はベンチに座る事となった。

 

「じゃ、先刻の話に戻しましょっか」

 栄美はベンチに腰を下ろすなり、そう言う。

「フタマタって言われるんですよね……友達に。『香甲斐君か修二君のどっちかにしなさい』って。ねぇ、二人とももてるから」

 それは、入学式の惨状を見ていれば、はっきりと分かる。

「傍から見れば、カップルなんだって、その姿。どっちかと、二人きりでいるときの姿が。だからさ、友達が言うんだよなぁ……どっちかくれって。恋、みたいな感情無くってもさ、そう周りから囃し立てられたら……気になりますよね……。私、人を懐柔する話術巧みだからどっちかを落とす事ぐらい容易いと思うんですけど」

 うあ、何気に凄い発言した。というか、敬語とタメ口が入り乱れているような。

「……駄目なんだなぁ……自分を嫌っている人を懐柔するのは楽なんですけど、嫌っていない人をってのは、難しかったり……とくに、自分が好いているっぽい人をするのは。何と言うか、それを実行するのがひけるんですよ。あ〜、言ってる事ごっちゃになってきた」

 栄美はカリカリと頭を掻き、言った。

「つまり、私は、あの二人が……好きなの。どっちかに絞れって言われても無理だと思う」

 言ってから、深いため息を落とした。

「修斗先輩は、あの二人……のこと、好き、なんですか?」

 …………。

 認めたくはなかった。

 今まで、女を女として認識する事を拒否って来た俺が、そう言う感情を持つなんて。

 女性は、嫌悪の対象。いなくてもいい存在のはずだった。

 なのに、なぜ今はあの二人が恋しいのだろう。

 いる事が、とても心地よいのはなぜだろう。

 もうとっくに、心の奥深くでは認めているのではなかろうか。

 ……その、感情を。

 いや、違う。心の奥深くだけが、否定しているかもしれない。

 ……認めようか、否か。

 考えている最中に、ふと、言葉が漏れた。

「そうなのか……も」

 かすれ声。

 他者には聴こえてないよな…………それで、何言ってんだよっ。

 もれた言葉に檄を飛ばす。他人事のように。

 でも……これが真実なのかもしれない。

 俺は……二人が……………………………………………………………………っ。

「好き、なんですか?」

 栄美が再び問う。

 俺は、ゆっくりと口をあけ、逡巡し、そして答えた。

「……好き……かもな」

 そう言った瞬間、何かが解けるような感じがした。

 認めたことへの大きな気持ちの変化は、頭を渦巻いていた歪みを、消したような気がした。

 だけど、また新たに出てくる悩み。

 ―――どちらを取れば。

 どちらかを選ぶしかない。選定者は、二人が俺をずっと好いている限り、俺、なのだ。

 俺の一言で、二人は、多種多様な表情を見せるだろう。

 ―――怖くなってきた。

「怖いな……中間に立っている者って」

「そうですね……噂によると、二人、私の事、好きみたい……だから、余計困る。修斗先輩と同じような状況かな……私」

 そういう噂は―――特に女子の間では、筒抜けだと思ったほうがいい。

「ねぇ、修斗先輩?」

「なんだ?」

「私たちが付き合いません?」

「それが出来たら苦労しないだろ?」

「ははは…………そうですよねぇ…………」

 ははは……と俺も苦笑した。

 そんな事したら、周りの視線が痛いし、何より自分を苦しめる結果しかもたらさないだろう。

 

 好きと認めたことは、俺の心情に、大きな変化をもたらした。

 ―――俺は、あの二人の、どちらが、多く、好きなんだろう。

 

 麒麟さんが好きです。でも象さんの方がもーっと好きでーす。

 

 麒麟と象のところに、二人の名前を当てはめなければいけない時期が、きっと来るのだろう。

 どちらかを、傷つけなければいけない。

 

 ―――好きと気付いた事への後悔が、深く広まっていくのを感じた。

 

 

 

 

    HR

          さぁ、葛藤開始。

          結構パーフェクト書いたんだなぁ……もう27か……。

 

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