〔13〕 ピクニック

 

 はろう皆さん。

 今は、このまえの川辺の空き地。

 秘密の場所じゃなくなってしまったのはちょっと残念だがな。

 弁当八人分。

 ぴったりすぎてすごいよな。

 初めはこの量を三人で食おうとしてたんだから驚きだ。

 そして、みんなで弁当を囲んで食べている。

 席は……北に隼先。そこから時計回りに、俺、瑠那、栄美、秀二、香甲斐、江津、美奈津先生という席順で座っている。

 隼先と、美奈津先生が隣同士にいるってのは、俺と江津と瑠那が策略で決めた事で、いろいろと誘導して見事に作戦は成功した。

「はい修。あーん♪」

超激甘な声で、瑠那は俺の前に卵焼きを差し出した。

「遠慮します」

ただ……俺の隣が瑠那ってのは失策だったな。

「あらあら。二人ともおあついのね」

美奈津先生が微笑みながら言う。

「そっうでーす♪」

瑠那は俺に飛びついてきた。俺はそれをひらりとかわ……。

「逃げるなよ」

隼先が怖い笑みを浮かべながら、俺が逃げるのを妨害した。俺は瑠那に抱きつかれた。

「はい修」

また瑠那は俺の前に……今度はから揚げを口の前に持ってきた。

 いやだ。いやだいやだ嫌だ……リフレイン。

 俺の顔赤くなってるんだろうな……。もう最近ポーカーフェイス無視してるし。

「遠慮します」

俺はちょっと引き気味で言った。

「遠慮しないの♪」

楽しそうだなぁおい。

 美奈津先生と、隼先以外は哀れみの目。隼先はザマアミロって言ってるけど。

「一回だけだぞ」

俺は瑠那に言った。

「うーん……分かった」

本当かなぁ……?不安。

「じゃあ。あーん♪」

俺はしぶしぶ口を開ける。

 そしてから揚げを入れられた。俺はそれをかむ。

 ……? から揚げがなんだかいつもと違う味だな……?

 瑠那が食べさせてからか? いや、断じて違うな。

「美奈津先生?」

江津が美奈津先生に言った。

「何?」

「隼也先生にも、さっきの鮎川さんみたいな事してあげたら?」

「うーん……おもしろそうね」

「はぁ?」

隼先は吹き出した。先生の声がとてつもなく情けない。俺が味わった恥ずかしさ。得と味われ。

「いやそれは……」

突然の事で、先生はしどろもどろになっている。

「はい、隼也先生」

美奈津先生は隼先の前に、から揚げを差し出した。

「こいつら……」

隼先は呟いた。俺と江津と瑠那はその二人をじーっと見ている。

 それにつられて、香甲斐と秀二と、栄美も見ている。

 先生は観念し、口を開けてから揚げを口に含んだ。

「隼也先生。美味しいですか?」

「おいひいでふ」

先生は顔が赤くなっている。美奈津先生がいると、隼先の表情がころころ変わるな。これはこれでおもしろい。

「美奈津先生」

俺はさらに隼先の顔を赤くすべく、作戦を立てた。

「何?」

「隼也先生の事を、『健次さん』と呼んでやって下さい。歳も近いんだし」

確か美奈津先生は、二十六歳だったような気がした。

「あら、そう?」

 その言葉に、隼先の顔は赤くはならなかったが、明らかに焦っていた。

「いや、美奈津先生…………?」

隼先は、美奈津先生が本当にそう呼びそうだったので、かなり動揺してる。

「どうしました?……健次さん」

「あ……いやなんでも……」

隼先のふぬけた発言に、みんなが吹き出してしまった。

  隼先。かーわいーいなー。

 少し経つと笑いがおさまり、みんなまたご飯を食べだした。

「これって、修斗君が作ったの?」

美奈津先生が言った。箸で弁当のおかずを持ち上げ、それを回転させながら見ていた。

「あ、はい」

「すごいね。私、料理できる男の人って、カッコイイと思うんだ」

その言葉に隼先は鋭く反応した。先生は料理の前に、身の回りの掃除すらできないからな……。

「修斗君って、ルックスかなりいいよね。何で学校で隠してるの?」

なんでみんなこの事を訊いてくるんだろう?

「いや……もてるのは嫌なんですよ」

俺はため息交じりで言った。

「あらら、贅沢な悩み」

 端から見ればそうなのかもしれないけどね……。毎日囲まれてるってのも、なかなかストレスがたまりますよ。……家でなんか、いろいろと……いっても悲しくなるだけだな。

 

 いろいろと会話が弾み、……ほとんど俺と香甲斐の話題だったけど、楽しい時を過ごしながら弁当を食べた。

 そして、俺と香甲斐以外は、それぞれ遊びだした。懐かしのフリスビーやら、バトミントンやら。隼先と美奈津先生もそれに混ざって遊んでいた。

 俺と香甲斐は、昼寝。

 兄弟そろって、食後はいように眠くなる。昨日までの疲れってのもあるけど。

 学校でも、五時間目なんて、ほぼ寝ているようなもんだ。

 俺と香甲斐は、この前のシートの上にねっころがり、ぽかぽか陽気の中寝ていた。

 冬で結構寒いが、日があたっていると暖かい。……温暖化かなぁ?

 なかなか寝られない。周りがうるさいからか、それとも、眠くないからか? でも、今かなり眠いしなぁ……。寝られそうで寝られない……。

 十分ぐらい経った時だ。香甲斐が話しだした。香甲斐も寝れなかったらしい。いや、香甲斐は、半日寝てたんだから眠くないか。俺と同じ状況なのかな?

「なぁ兄貴……?」

「なんだ……?」

お互い寝ぼけ眼状態だ。

「……どっちが本命?」

 ………………………………? 眠いから頭はたらかねぇ……。

「……どっちって?」

「江津さんと、瑠那さん」

 ああ、その事ね……っておい!

「何訊いてんだよ」

この質問でちょっと目が覚めた。

「いや……二人と兄貴って仲いいなって思って」

「どっちが本命とかはないよ。好きでも嫌いでもないし」

「もしかして!」

香甲斐が叫んだ。

「栄美とか?」

「それはない。今日で会うの二回目だし、…………お前……もう栄美の事呼び捨てか?」

「それは……栄美が、呼び捨てで呼べって……」

兄弟だな。江津も同じ子と前言ったし。

「兄貴。今年のバレンタイン、五十二個になりそうだね」

からかい口調の香甲斐。二個ってのは、たぶん瑠那と江津だろう。五十個ってのは、うちのメイドだ。

 そのたびにバレンタインデーなんか消滅してしまえって思うよ。一日一個ずつ食っていっても、五十日……。グロッキー状態に陥るよな……。

「それで、どっちが本命?」

……しつこいなぁ。

「だから、好きでもないし、嫌いでもない」

「ふーん……」

香甲斐はむくっと起き上がった。

「そう言えば……」

香甲斐は何か思い出したように言った。

「なんで俺にラフなカッコさせたの?」

もう香甲斐は眠気から覚めたようだ。

 俺も体を起こした。もう眠くなくなっている。

「それはな……」

俺は、四角の空き地を指差した。

「あの空き地。俺が作ったんだけど、あそこで、百メートル勝負しないか?」

「なるほど。それがねらいか。でも俺は、長距離の方がいいな」

「つべこべ言わずに。やるかやらないか?」

 香甲斐は少し考えた後、「受けて立とう」と言った。

「決まり」

俺は立ち上がった。香甲斐も立ち上がった。

 俺はバッグからストップウォッチを取り出すと、隼先の方を向いた。

「おい、健次!」

呼び捨てで言うのも久しぶりだな。

「先生を呼び捨てにするな」

遊んでいた先生が俺の方を向いて睨む。

 じょうがないな……。

「健次さん」

俺はさっきの美奈津先生みたいな口調で言う。声色を真似るのは大得意だ。

「やめろ」

隼先は低く呟いた。

「どうでもいいや。先生。タイム計ってくれない?」

俺はそれを無視する形で話しを進めた。

「しゃあねえな」

先生は俺の方に近づいてきた。

「投げろ」

俺は先生の言ったとおりにストップウォッチを投げた。

「よし、初めと、二回目は、どうせウォーミングアップだろ?」

「もちろん」

それを聞くと。先生はゴール付近へと向かって行った。

 何が起こるのかと、みんなが集まってきた。

「走るの?」

江津が訊いてきた。

「走―――」

「修って速いの?」

瑠那がすかさず言ってきた。せめて俺の発言が終わってから言って欲しいものだが……。

「兄貴は速いよ。少しでも兄貴に欲があれば、全国間違いなし。……俺も欲はないけど……」

香甲斐は苦笑した。香甲斐も、長距離だったら、余裕で全国だろうな。あえてそれをしていない。香甲斐も俺と同じで、目立つのはあまり好かないからな。

「おら、走るんなら早くしろ!」

ゴールから隼先が怒鳴る。

 みんなは、ゴール付近へと向かった。

「がんばって11秒切ってね」

江津が手を振った。俺も手を振った。

 それに対して瑠那が少し怒っているようだ。

 

 みんながゴールの向こうに行き、準備は整った。

 一回目、二回目を軽く走り、ウォーミングアップを済ませた。

「兄貴。11秒切れる自身は?」

香甲斐が訊いた。香甲斐は、最高12秒02とか言ってたな。香甲斐は12秒を切るのが目標だ。

「さあな。お前は?」

「勝負は時の運でしょ?」

「それもそうだな」

「いくぞ!」

隼先が叫んだ。

 俺達はクラウチングスタートの体勢になった。

「よーい……ドン!」

 ぜってーきる。

 今日切れなきゃ、次の春休みまで、絶対切れない。

 切ってやる。

 俺は本気で走った。

 切れるか切れないか。

 俺は香甲斐を引き離す。とりあえず差を一秒はつけなくてはならない。

 俺は地を蹴り風を切り。何言ってんだか。アホだな。

 そして、俺はゴールした。

 それに遅れることたぶん約一秒。香甲斐はゴールした。

「先生。タイムは?」

俺が訊く。

 何か隼先は神妙な面持ちだ。

「おしいな……あれだ、最高記録と同じだ」

マジっすか? 11秒?

「先生!何であと0,01秒早く押してくれなかった!」

俺は隼先の肩をつかんでいった。

「……おーい香甲斐」

先生は俺から逃げるようにして香甲斐の方に行ってしまった。はーぁあ……。惜しいな……。

「香甲斐、11秒97だぞ」

「マジ! やった」

香甲斐は大きなガッツポーズで喜んだ。

「香甲斐って速いんだな」

秀二が香甲斐に言う。

「ホント。速いね。香甲斐のお兄さんも速いけど」

栄美が言った。

 俺は楽しそうな風景を見つめているだけ。

 ちょっとショックだったな……。

 なんだろうな?途中で体勢が崩れたりしたかな?

「修斗、残念だったね」

江津が俺を慰めてくれた。

「次がんば―――」

「修って速いんだね。がんばって11秒切ってね」

また瑠那が話し終わらないうちに飛びついてきた。

「高校生活終わるまでには、切りたいよな」

どうなるかは分からないけど……やっぱり切りたいよなぁ。切れそうだから、絶対切りたい。

 

 そして、この後、みんな走ったり、寝たり遊んだりして、今日は終わった。

 この日を境に。隼先と、美奈津先生の仲が進展すればいいんだけどな。

 隼先ったら『修斗!掃除洗濯家事一般の仕方教えろ!』とか言ってたからな。『暇さえあらば教えてやろう』と言っておいた。美奈津先生の発言は、隼先を変えますね。

 香甲斐と、秀二と、栄美も仲良くなったし、何より一番よかったのが、江津と瑠那の仲が、ある程度、よくなった事かな。よくなったと言っても、瑠那が江津を睨まなくなったぐらいですけどね。二人がいるだけでぴりぴりしてたんじゃ、こっちがたまったもんじゃない。

 さて、冬休みが明けたら、またいろいろと起こりそうな予感。

 俺に災難が降りかかりませんように。願うだけですなこりゃ。

 あ! ……夢についての作文……どうしよう……。……一気に憂鬱。 

 

  HR     

    修斗が江津と瑠那(五十音順)を同時に呼ぶ時に、差別しないように

    どっちが先に呼ばれるかってのはだいたい同じ確率になっています。     

        ……隼先にもライバルが必要かなぁ…………?

ふと、修斗の身体能力書いてみたくなりました。なので公開。

 

 

身長 178、6(まだのびます) 体重 64、3  座高 86、8

IQ 推定300以上(某キャラ たま○っちのま○っちを超えた!?)     ルックス 凡人を百とするなら、修斗は一億。

視力2、0(と本人は思っているが、実際に計れば、4、0は堅い。)

スポーツテストから

握力 右68  左66    上体起こし64回

長座体前屈 なんと言うか……胸がひざにつきます。つまり、71ぐらいかな。

反復横飛び 93回      シャトルラン 267回

五十メートル走 5秒7     立ち幅跳び 4m02

ハンドボール投げ 63メートル

 

   ………………………………当たり前だけど、満点のA

  ……すべてにおいてずば抜けてます。

  このデータは、変わる可能性があり。

  最高記録がどれくらいなのかが分からないので、それに応じて変更します。これは絶対無い!と言う方はメールで。

  修斗を、人間と認めない人は、その場で挙手して下さい。

  あ、ちょっと鈍いかな? 唯一の欠点。……欠点と言えないぐらい小さいけど。

   

 

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