NEVER
いつもどおり学校から俺は家に帰ってきた。そしていつもどうりにおやつをあさり始めた。
「雄也・・・ちょっと・・・。」雄也とは俺のことだ。母さんは、こっちに来いと手招きをした。いつもだったら、少しぐらい愚痴をこぼしていただろう。
しかし、母さんの重い言葉に、ただ「はい」と返事をするしかなかった。
俺は椅子に座った。母さんも、俺の前にある椅子に座った。
母さんはなんだか深刻な表情をしていた。
母さんがこんな表情をしたのは初めてだった。いつも明るかった母さんが、火を消したように、暗かった。
周りの空気は重く、息が詰まりそうだった。ちっちっという、時計の音がなんだかとてもうるさく聞こえた。
「あのね・・・雄也・・・。」母さんは少し言葉を止め、そして続けた。
「お父さんが・・・死んじゃったの・・・。」唐突な言葉に俺はなんて反応すればいいのか、まったく分からなかった。母さんはうっすらと目に涙を浮かべていた。
それを隠すように、横を向きながら、震えた声で話を続けた。
「交通事故だったんだって・・・。雄也が帰ってくる約5分前に、死亡の連絡が来たの・・・。ほとんど即死だったんだって・・・、病院について、そのまま、息を引き取ったらしいの・・・。」母さんのほほに、一筋の涙が流れた。
「雄也も・・・来て。」そう言うと、母さんは立ち上がった。俺も立ち上がった。
どこへとは言わなかったが、だいたい分かる・・・。病院だろう。
俺と母さんは車に乗った。俺には2歳年上の兄がいるが、兄も病院へ向かっているらしい。
車の中は、シーンとしていた。母さんに話しかけるのが怖かった。母さんは、前を向きながら、声を押し殺し泣いていただろう。しきりにティッシュをつかんでは、鼻をかんでいた。
−何で俺は涙が出ないんだろう・・・。ふと、そんな疑問がよぎった。
たぶん、父さんの死を、受け入れてなかったんだろう。受け入れようとしても、頭のどこかで、拒否しているのかもしれない。
いや、ただ、受け入れているけど、何にも悲しくないのかもしれない
何であろうと、・・・泣けない自分を、哀れに思った。
10分ほどで、病院に着いた。俺と母さんは車から降りた。
・・・二人の足取りは重かった。
部屋を訊くと、俺達は、そこへ向かった。とても行きづらかった。
兄さんは先に来ているらしい。今は、夜の6時。思ったよりも静かだった。
「母さん。俺ちょっと外の空気すってくるわ。」何でこんなことを言ったんだろう。
自分でも分からなかった。ただ、この空気の中、二人で歩いているのが苦痛なのだろう。
「・・・分かった、後で来なさい。」母さんはそう言うと、一人で部屋へと向かっていった。
俺は外には出なかった。近くにあった休憩所で、ジュースを買いソファーに座っていた。
ここにも、あまり人がいなく、最後の一人も居なくなってしまった。
この空間に、一人だけ取り残されたような気がした。
上を見上げてみる。そこには、消えかかった蛍光灯があった。弱々しく光り、点滅している。なんだか急にそこにいたくなくなった。
あの蛍光灯みたいに、俺は消えかかってるんじゃないか。そんな恐怖を感じ取った。
廊下を走り、あの部屋へと向かった。後ろから誰かが付いてきているような気がした。
そんなはずがないのは分かっていた。しかし、そんな脳とは対照的に、体が恐怖を感じていた。
俺はノックもせずに、扉を開けた。そこでは、兄と母さんが居て、先生からいろいろな説明を受けていた。母さんが俺が来たのに気づいた。
「・・・雄也。あなたもこっちへ来なさい。」母さんはそう言うと、また先生の話を
聞き始めた。母さんは、もう泣いていなかった。もう、泣くのはやめたんだろう。しかし、何か衝撃を受ければ、また泣き出してしまうんではないかと思うほど、その表情は
悲しみに満ちていた。兄さんは、ぼろぼろと涙をこぼしていた。声を出さずに泣いていた。兄さんと父さんはとても仲がよかった。・・・父さんは俺とも仲がよかった。
なのに泣けない・・・。
俺はそっと、父さんの顔をのぞいてみた。白い布が被さっていた。
交通事故にあったのだから、顔は原形をとどめてないんじゃないか。そんな考えもあった。しかし、手は、白い布を軽くめくっていた。そこには、まだ、ちょっと赤みを帯びている。父の顔があった。目は閉じられ、ピクリとも動かなかった。
父のほほにさわってみた。普通の感触だった。しかし、指先には熱が伝わってこなかった。−やっぱり死んでしまったんだ・・・。そう思い、父さんの顔をじっと見つめた。
ぽた・・・と、一滴の水が父さんの顔にかかった。俺は自分の目の下あたりを、さわってみた。暖かい涙が、止まることなく流れていた。
そのとき、どっとあついものが、体中を巡った。俺はその部屋から、逃げ出すように外へ出た。周りの人は驚いていた。
・・・泣き顔は人に見られたくない。俺はトイレに逃げ込んだ。
そこの鏡に映った俺の顔は、とても、弱々しかった。
泣くのをやめようとしても、父さんとの思い出が頭をよぎり、その数だけ、涙がほほをつたった。
父の死を認めた俺は、悲しみに包まれた。
ぶつけようのないこの悲しみの対処法が見つからず、俺は泣き続けた。
暖かい涙が、雄也の手の甲に、ぽつんと落ちた
END
HR
うわっ。このストーリー暗っ。
本当に俺が書いたんだろうカって疑問に思うくらい。
さて、ここまでが本当の話ですが、これをおとしてみよう。
雄也は泣いていた。鏡の前で、父親との記憶がいやでも脳裏をよぎる。
こんこんと、トイレの扉を誰かが叩いている音がした。
「どうぞ。」俺は急いで涙を拭いた。泣くのを我慢した。
−ん? 待てよ。俺は大に入っているわけでもないし、ここは病院のトイレだ・・・。
雄也が悩んでいると、トイレに兄が入ってきた。
「雄也・・・。そんなに悲しむなよ・・・。」その言葉は以外と軽かった。
「父さんが・・・死んでないからって!」兄は突然笑い出した。
何で笑っているのか俺にはよく分からなかった。死んでいない・・・?
「あははははは。はいこれ。」兄はプラカードを雄也に見せた。
『ドッキリ大成攻』
それを見せると、たくさんのスタッフやら、母さんやらが出てきた。
そして、父さんが・・・。
「雄也、うれしいぞ・・・。こんなに父さんのことを思ってくれて。
後、見事に引っかかってくれて。」後者の方が本音のようだ。
「雄也さん。引っかかってみていかがでした。」
よくわからんが、マイクが口の手前に来ていた。
俺は固まった。無性に腹が立った。
そして、思いつく限りに俺は叫んだ。
「『だいせいこう』の『こう』は『功』だー!!!」
その振動で、病院が揺れた。そして・・・病院は壊れた。大破した。
こうして・・・惨劇は幕を閉じた。
真のEND
あはは、無理やりっすね。
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