ジェラシぃ?

 

 

「ソフィア、ちょっといいかしら」

「なんですか?」

 宿屋の一室。マリアの呼びかけに、ソフィアは応じた。

 この部屋にはマリアとソフィアしかいない。他の男――フェイト、クリフ、アルベル、ロジャー――は隣の部屋に泊まっている。

 節約のため、男女一部屋ずつしかとっていない。多分隣ではベッド争奪戦が行われているだろう。なにせ二つしかないから。

「どうしたんです、マリアさん」

 風呂上りなので、鏡の前で髪を整えているソフィアは訝しげに訊ねた。神妙な面持ちのマリアは、ベッドに座り込む。マリアはソフィアより随分先に風呂を上がったから、髪は整え終わっている。

「私達が、特殊な能力を持っていることは、もう納得したわね」

「……はい。力を使ってあっちに行ったんですから、それは承知済みです」

 あっちとは、FD空間のこと。

 私たちはデータ上の存在で、そのFD空間に住んでいる人々に創られたと言うことを、そこで知った。

 自分に備わっている力、そして自分が作り物、データだと言う事実、怒涛のように押しかけてきた衝撃を、最近やっと受け止められるようになってきた。

 ソフィアに備わっている力『コネクション』 空間を繋ぐ事が出来る力。

 マリアに備わっている力『アルティネイション』 物質を改変する力。

 この世界とFD空間を繋ぐ事がで来たのはソフィアの能力、そしてFD空間で存在できるように身体を変化させたのがマリアの能力なのだ。

「この力があることが解かっていても、それを使いこなせなければ意味が無い――そう思わない?」

 確かに、今の力は不安定だった。要所要所では発動可能――自動発動と言ったほうが正しいかもしれない――なだけで、自由自在に操ることが出来ない。

「もし使いこなせるなら、それに越したことはない、でしょ?」

「はい。でも突然どうしたんですか?」

「今だからこそよ」

 マリアは思い浮かべた。

 ミラージュ、マリエッタに始まって、ネル、ファリン、クレア、さらにこのソフィア。どうせいつかスフレにも。

「悔しいじゃない」

「そうですよね。自分たちの存在意義が認められないなんて。認めたくないですけど向こうが私たちを創ったんです。それを簡単に消そうとするなんて理不尽です」

「違うわ」

「え?」

 あっさり否定され、ソフィアは呆けてマリアを見返した。

「見せ付けられてきたのよ、我慢してきたのよ、悔しいじゃない! 努力しても変えられない物を、いろいろな人に越されてるなんて」

 マリアはちらとソフィアのソレを盗み見る。

 盗み見た、だがソフィアはその視線に気付いた。一応戦闘慣れしてきたので、敵(人)の視線には気をつけるようにしている。

 ソフィアは視線の先にあったソレを確認した。

 ああ、確かに。

「でもね、努力で変えられるかもしれないのよ。このアルティネイションを使えば!」

 マリアは自分のソレにそっと手を乗せる――被せるの方が表現が正しいかもしれない――。

 手のひらに全神経を注入、注入、注入。

「あのぉ、それは無理なような気がしますが」

 マリアはいったん動きを止めて、ソフィアの方に向き直る。

「どうせあなたは、ソレが大きすぎて困る、とかしか悩んだこと無いんでしょう」

「――……そう、ですね」

「下着選ぶ時に合うサイズが見つからなくて困った時あるんでしょう」

「――……あり、ましたね」

「水着着た時に、視線が痛かったでしょう」

「――……一応、ですけど」

「肩、凝るでしょう」

「――……偏見、だと思いますけど」

 マリアはすっくと立ち上がる。

 鬼気をまとったその姿に、ソフィアは思わずすくんだ。

「マ、マリアさん?」

「ソフィア、少し表に出なさい」

「え、遠慮します」

「そう謙遜せずに」

「そぉんな怖い顔してると、パジャマの猫さんが怖がりますよ」

 マリアのパジャマには猫の刺繍がしてあった。マリアの趣味という訳で無く、ソフィアの趣味。ちなみにソフィアのパジャマにも猫の刺繍。二人のパジャマは色のみ違うだけであとはおそろい。

「愚問ね。この猫はもう手なずけたわ」

 マリアの言っていることがいつもと違って度を越えている。理知聡明であるはずのマリアが普段吐かないような事を口々にする。話題が支離滅裂である。いったい何事だろうと思いながらも、ソフィアはただ怯えることしか出来ない。

 マリアは武器(フェイズガン)を取り出して、ソフィアに構える。

 そのときソフィアは垣間見た。マリアがいて死角になっていたベッドの上に置いてある、一升瓶――

「……マリアさん? 酔って……ますよね?」

 パリィイン!

 突然ソフィアの眼前にあったはずの鏡が消失した。マリアの銃からエネルギーが放出された証拠に、銃口周辺の空間が揺らいでいる。

 血の気が、引いた。

「ソフィア、アルティネイションであなたのソレ、ちっちゃくさせてもらうわ」

「いえ、だから、その、無理ですってぇぇえ! きゃぁやぁあぁぁぁっ!」

 

 

 

 次の日、部屋のいたるところに銃痕があったとかなかったとか。

 ソフィアがマリアに禁酒令を出したとか出さなかったとか。

 フェイト達は理由を知る由も無い。

 

 

 

 

    HR

 

     具体的な固有名詞は出しませんでした。

     あえて。

     解かりますよね。ソレ。

     多分彼女は、風呂場でソフィアのソレを見せ付けられたんでしょうよ……。

     あ、オチがインハイダと似てる(苦笑)

 

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