インハイダ
「大丈夫、僕が守ってあげるからさ」
安請け合いしちゃったな。
守ってあげるなんて嬉しい言葉をかけられて、すこし有頂天になっちゃって。
私の了承があるからって、フェイトはどんどん戦いを進めてる。
確かに私も一緒に戦闘しているんだけど、フェイトのレベルが高いから私はほとんど見学。
今やっているのは『ファイトシュミレーター』と言うゲーム。RPGとは違って、本当に自分が戦うゲームだ。プログラムが作り出した魔物相手に、こちらもプログラムが作り出した武器などを装備して戦う。だけど、攻撃した時の感触とかダメージの感触とかはすべてリアルに伝わるので、攻撃を受けたら無論痛い。死にいたる事はないらしいけど……。
私が思うに野蛮なゲーム。
「ソフィアっ! 回復を頼む!」
「はいはい」
名前を呼ばれて、私は杖を構えた。このゲームの中での私は、魔法使いということになっている。学校で紋章術を習った時の成績はよかったから、馴染むといえば馴染むんだけど。
魔法の使い方は簡単。特定の言葉を唱えると、その魔法が具現化するのだ。
本当は詠唱する時は敵から離れた方が良いんだけど、フェイトが全部一人でやっつけてるから近くでも簡単に詠唱できる。
詠唱しながら、私はため息をついた。
リゾート地のハイダにまで来て、なんでゲームをしているんだろう?
本当だったらビーチで泳いではしゃいで、夜になったらロセッティー一座のサーカスを見に行って、その後に行われる打ち上げ花火を見て、いいムードになったところでフェイトと――は無理かもしれないけど。
「ヒーリング」
めんどくさそうに唱えたからか、フェイトがからかうように私を見た。
「ソフィア、少しぐらい動かないと、また太るぞ」
「バカ! それに『また』って何よ!」
信じられない! 女の子にそんな事言うなんて、デリカシーの欠片も無い。
「少しぐらい動けって言われたって、フェイトが全部倒しちゃうから、私の方にまわってこないんだもん」
「じゃあ一匹まわしてあげようか?」
「え?」
私が理解する前に、フェイトは二、三匹倒してから、戦うのをやめた。それから華麗なステップでその場を立ち去る。
「ぐるるるるるる……」
私の目の前に残されたのは、犬とも狼ともとれる、青い魔物。鋭い牙を持ち、唸り、三本の尻尾を左右に揺らし、私を睨み据えている――
「え、あの、ちょっと待っ―――」
当然の如く魔物は待ってくれない。襲い掛かってきた魔物を、寸前の所でかわす。
詠唱したくても敵がそうさせてくれない。離れようとしても敵の動きが速くてすぐに追いつかれる。ためしに杖で殴ってみたら、確かにダメージは与えたんだけど、その前に自分の手がジンジン痛くて泣きそうになった。
敵がブレスをはいてきた。虹色に光る鮮やかなブレスは、私の身に襲い掛かる。
避けたが、完全に避けきれずに左腕をかする。大してダメージはあまり無いはずなのに、なぜかびりびりとしびれる。
今のブレスは状態異常攻撃だったのか。
「フェイトっ! ちょっと助けてよ!」
「ほらー、頑張れソフィア」
フェイトは遠くで、お茶を飲んでなごんでいた。風は無いはずなのに青い髪をなびかせながら、こちらを見て笑んでいた。
殺ス。
何かがぶちきれた。
力がみなぎる。いままで使うことができなかった魔法の詠唱が頭の中に流れ込んでくる。
精神面強化による身体能力上昇。
いい機能がついてるんだね、このゲーム。
敵は怯えていた。フェイトも怯えていた。私の放つオーラか、視線か、それとも今唱えている魔法にか。
「謝ったって、許してあげないんだから!」
「ソフィア、それは誰かが死んだ時の怒りボイス……」
「大丈夫、今から二人(一人と一匹)死ぬから」
杖を高らかに掲げ、そして言い放つ。
「エクスプロージョン!」
プレイヤーネーム『フェイト・ラインゴット』プレイヤーランクAAA。
プレイヤーネーム『ソフィア・エスティード』プレイヤーランクS
炭化している――消滅していないということはまだ戦闘可能ということ――二つの物を見つめ、もう一発ぶち込んでやろうと思ったとき、地響きが空間を支配した。
このとき、私は知らなかった。本当の戦いが、目の前まで迫ってきていることを。
HR
つーか題名適当。
やったぁ、腹黒フェイト誕生っ! 今度は爽やかにしてやろう……そしてラブラブにしてやらないと……。
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