チャリンコ奮闘記 FIGHT2(やっぱりでか!)
思い出して欲しい。
これは、豆野 雨梨(ずのうなし)性別男、17歳が繰り広げる、お笑い奮闘記である。
あの壮絶な激闘からはや二年。
相変わらずはみぱんマンは続いていた。
最大瞬間視聴率は100%で、平均視聴率も95%という超人気番組だ。
はみぱんマンは、いまや海を越え世界に進出している。
外国でも、例に見ない視聴率を記録しているという。
そして、俺は今、はみぱんマンのビデオを見ているところだ。
『はーみむーめもー。はみぱんマン喰らえ。必殺ズボン上げ』
『しまった、はみぱんじゃなくて力が出ない……』
『これで終わりだはみぱんマン』
『はみおじさんが来てくれれば……』
『残念だったな。はみおじさんは、はみんちゃんが妨害している所だ』
『はみぱんまーん』
『はみこさんだ』
『何。なんではみおじさんと別行動をしているのだ?』
『残念ね。はみおじさんははみんちゃんを融解したわ』
『融解!? 溶かしたのか!?』
『はみぱんまーん。新しい下半身よー』
『じゃきーん。元気一億倍。はみぱんマン!喰らえはみきんマン。はーみパーンチ』
『はみはみきーん』
『きらりん』
何度見ても泣けてくる。
あの吹っ飛ぶシーン。この話だけ、右に三ミリ飛ぶ方向がずれているのだ。
もう永久保存版だな。
今までにビデオテープ10000本分も撮ったからな……。
すべてははみぱんまんのため。ビバ、はみぱん!
さて、もう一本見ようか。
こんどは15282話目。
これは、少しだけはみぱんマンのパンツはみ出し具合が一ミリ多いのだ。
おれはこの話で号泣してしまった。
この歳になってもまだ感動する。
はみぱんマンは奥が深いんだ。
「雨梨〜」
母さんの声が響いてくる。
なんだ?せっかく見ようと思ったのに。
「たくあん狩って来てー」
体が反応する。
いやいけない。大好物だが、そこまで欲しいとは思わなくなった。
はみぱんまんの方が大事だ。
「いや―――」
「七円ハム狩って来ていいから」
「じゃありません。行かせて頂きます」
七円ハム。五円チョコでもなく、十円ガムでもない。七円ハムなのだ。
ハムが七円。
小さいサイズだが。俺の欲望を満たしてくれるには充分だ。『食べて』と催促するピンク色の肌。引きちぎる時の快感。そして、優しく噛んだ時に出る汁の高貴な味わい。(このハムの説明を、友達に暗唱し、『何のことについて言っているでしょう? 5文字以内だよ』と訊いてみよう)七円ハムを食べた時に感じたすべて……そうそれは、恋に似た気持ち……。
ふっまた自分の世界に入ってしまったようだ。
七円ハムにはバリエーションがある。
生ハム。くんせい。焼き。そして極めつけがハンムラビ法王。
すばらしい、ハンムラビ法王は、食べるときちんと悲鳴をあげてくれる。
『私を食べるとはいい度胸だ。地獄で待ってるぞ。』ってな。
さて、一通り説明を終えたところで、出かけようではないか。
……待てよ。外の天候はどうだ?
晴れだ。
天気予報でも一日中晴れと言っていた。
大丈夫。
流石に母さんも鬼じゃないさ。
決心した俺は、外に出る。
いや、母さんに蹴りだされる。そして、またバタンと扉が閉められ、かぎもかけられる。
外では、竜巻が猛威を振るっていた。
「なぜだー!!!」
……そうか! 母さんは過去の天気予報を、録画していた時があった。
窓を見る。
空の風景の写真が貼られていた。
しまった!!!!
してやられた!
とりあえずチャリに乗り込む。
死ぬのはゴメンだ。
竜巻はもうそこまで迫っていた。
ははん。
俺は音速を超える男だぞ。簡単に逃げ切れるわー!!。
曲がりくねった道だが、塀などぶっ壊せば関係ない。
しかし俺の予想を反し、竜巻は俺のスピードに合わせ、どんどん加速してくる。
マッハ1を超えた。衝撃波が襲う。
くそ、竜巻め。止まれ!
竜巻は俺を追いかけるのを止めてくれない。
俺はこぎながら竜巻を振り返る。
そこで信じられないが見てしまったから信じるしかない光景を目にした。
竜巻が分裂したのだ。
二つになった竜巻は、俺を挟み込むように接近してくる。
死ぬ。死ぬ。
だめだ。死んだら、はみぱんマンも、七円ハムもどっちも愛せなくなる!
「うおー!!!!!!」
また力の限り叫ぶ。あたりの空気が震えた。竜巻も揺らいだ。
これで消滅するはずだ。どうせ前回と同じ……。
空気のゆがみは、新たなる竜巻を生み出した。竜巻の数は見える限りで一つ。
つまり、成層圏を破るであろう竜巻が発生していたのだ。
吸引力が強い。
俺も引き寄せられていく。
負ける! 頑張れ俺!
それを後目に、俺は浮いてしまった。
しかし大丈夫。
浮いたって大丈夫だ。こげば関係ない。
空を飛ぶには、足を上げて、もう一歩の足も上げる。そのときにもう一方の足が地面につく前にもう一方の足を上げ……。というのがある。
チャリも一緒だ!
思いっきりこぐ。
空中のある一定の場所で止まった。
俺の進む力と、吸引力が一定になったのだ。
ふ、所詮竜巻なんてこんなもんよ。
しかし、俺は気づかなかった。
俺が一定の場所にいたって事は、竜巻は俺に近づいてきていたわけで……。
また生死の狭間から帰ってきた俺は、壊れかけのチャリをこぎ、ようやくスーパーにたどり着いた。
そのときにちょうどチャリは壊れた。
例によって、建物はまた修復されている。
今日は臨時休業なんかではない。
しかし、俺は気づいた。
「七円ハムは、駄菓子屋じゃないと売ってないじゃないか!!!」
駄菓子屋は、ちょうどここから100キロはなれている所にある。
とりあえずたくあんを買った俺は、歩き出す。
俺は冷静だった。
近くの交番の前に行く。
「すいません。実は迷子になっちゃって、家の場所は、こっから100キロ離れている駄菓子屋なんですけど、車で連れて行ってもらえますか?」
俺の戦いは終わった。
余談だが、『食む』は、『ハム』と同音異義語らしい。
HR
あーばからし。
少しは現実的なことも織り交ぜればいいものを。
水に浮く方法は、……知ってるか。
絶対無理だけどね(笑)
FIGHT3予告。(だけかも)
はみぱんマンはついにギネスに載った。映画化も決定し、公開前から、もういくつもの賞にノミネートされている。はみぱんマンは世界のアニメとなろうとしていた。そんな中、相変わらず家でのんびりしていた俺は、はみぱんマンショーのチケットを手に入れた。
続かないと思ってくださったほうが懸命です。
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