☆←更新久しぶりすぎて一章二章覚えてねーよ方向け。 久しぶりの雨が降った。大地を濡らす程度の、穏やかな雨だ。 こちらでは恵みの雨だが、山一つ隔てた向こう側では橋が落ちるほどの大雨が降ったそうだ。東からの来客が鈍ったのはそのせいだろう。 タバコに火をつけると、紫煙が天井へと登っていく。煙は部屋を包み、靄のように薄くなっていく。 やきが回ったのかもしれない。 壁に寄りかかるようにして窓を見ると、他の者には見せられない苦悩で歪んだ自分の表情が映り、思わず自嘲した。 綻びの兆し。長年続いた体制ももはや崩れ始めている。そこから来る自分自身の焦りが、素性知らぬ男の情報を鵜呑みにする愚行を犯した。結果的その情報が正しかったとはいえ、暗愚な行動に他ならない。 男から情報を聞く前からすでに疑心はあったが――。 首を振る。関係ない。二度とそんな事は犯すまいと、心に楔を打ち込む。 「……すでに手遅れかもしれないがな」 窓越しに視線を落とすと、家の門の前に座り込む、薄汚い一人の少女の姿があった。 いつもなら関係者をすべて消していたのに、今回はそれを行わなかった。それも男の提案で、情報を貰った手前断ることができなかった。見せしめにすれば効果的だろうと考えることもできるが、このような見せしめは何かの火種を作る可能性だってある。過去の歴史を紐解いてみれば、些細なことから動乱が巻き起こった史実は腐るほどあるのだ。 彼は空を見上げた。この雨も、明日には止むだろう。 |
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